20230501 藤内壁 前尾根 マルチトレ

日時:2023年5月1日(月) 7:05〜16:45
天候:晴れ(下山後に御在所山頂付近で雨)
参加者:S根、M戸(報告者)
場所:御在所岳 藤内壁 前尾根(三重県)

<行動記録>
駐車場 7:05発 → 藤内小屋7:33(小休止)→藤内壁 前尾根 P7取付き 8:00頃着 → P7登攀開始 8:20頃 →P3 終了 12:55頃→ P2 ヤグラ登攀開始 13:10頃 → ヤグラ登攀終了 14:00頃
装備片付け途中の14:10頃に、後の単独クライマーさんがヤグラ登攀中に2.5m滑落、目の前でグランドフォール。単独クライマーさん(=要救助者)への初期救助(=ファーストエイド)と消防へ救助要請。後に山岳救助隊が到着し、引き渡して下山開始 15:10頃→駐車場 16:45頃着 下山

<状況と所感>
新人S根さんの春のクライミング合宿参加や今後の本ちゃんデビューに向けて、S根さん2回目の前尾根でのマルチトレ。今回は、P4後半の簡単な所で初リードをしてもらうこと、P4滑り台を初登りしてもらう事が主目的。但し今回、ミスやアクシデント有りの山行となりました。

まず最初は、S根さんがアプローチシューズを積み忘れるミスがあり、履いてきたペラペラのスリッパに近い靴で登ってもらうことに(^_^;
でも、今回P7取り付きは、今回最初に取り付くことができて直ぐに登攀スタートできて前回よりもかなり暖かい気温だったのがせめてもの救い笑
次は、P7をS根さんがフォロアー登攀中に、アルパインヌンチャク回収時にカラビナ1個を落としてしまうミスが発生(^_^;
今度は私も、、、P5で組み直したアルパインヌンチャクのスリングとカラビナ1個を落としてしまうミス発生。つられたか笑。それに焦って、2個セットしたカムのうち1個のカムにロープを通し忘れてしまうミスも発生(^_^;

いやな予感がするので、より慎重に登攀することにしました。
次のP4前半では、1ピッチで登攀できますが、あえて途中ピッチ切って滑り台を慎重に。P4後半では、S根さん初リードしてもらうことができました。カムセットがチョット甘かったですが、今後は更に良くなると思います。P3を順調に登攀完了。P3まで小さなミスで済み、大きなアクシデントに至らなく良かったなとここでは思いました。

P2ヤグラ取付きに到着した際、単独で登って来られて私達を途中抜かして行ったクライマーさんが私達を待っていました。その方は、私は時間かかるので先に登って下さいということで先に登らせてもらいました。懸垂下降し登攀が終えて、これ以上なにもミスなく時間もかなり早く行動できたので帰ろうと装備を片付けしていたところで、前の事が予兆のようなアクシデント発生。

後から登っていた単独クライマーさんが、GriGriとカム等を使って単独登攀用のビレイシステムを組みながら登攀されていたのですが、2.5m付近で滑落してしまい、ロープを片付けていた私の目の前で、左側を下にグランドフォールしてしまったのです。はっきりとは把握できなかったのですが、ロープを出し過ぎて滑落を止められなかった様です。(単独登攀のセルフビレイシステムは大きなリスクあるのでオススメできませんし自己責任の範疇です)

要救助者の方は、頭は打っていたもののヘルメットをされており意識ははっきりしていたので、すぐ救助要請しようと一言声を掛けましたが、「大丈夫、すこし落ち着いたらたぶん動けるので要請かけなくてよい」と仰っていたので少し様子見。S根さんが見かねて、持っていたカイロやエマージェンシーシート、防寒着で保温する等のファーストエイドをし初めて頂きました。後続で来ていた他パーティの方からも保温のためのカイロや防寒着も提供して下さって感謝です。

M戸の過去1m程度の軽い滑落し打撲や捻挫した経験上では、直後は痛み無く大丈夫でも、体内アドレナリン効果で感じないだけで徐々に痛みが出て初期的な処置が十分でなく治療に時間を要しました。今回は2m以上の滑落なのでもっと酷くなると思っていました。やはり徐々に痛みが出てきて動けない様子。それでも要救助者の方は、「時間をおいたら治まって動けるので電話しなくて良い」と周りに迷惑をかけないようにという気持ちが強いからかおっしゃっていましたが、状況は深刻と感じ、少しでも早く病院で診療を受けた方が良いと、M戸が最終判断し119番へ救助要請。消防は最初に、「消防ですか」「救急ですか」と質問が必ずあるので、「救急です」と答え、プラス「そして山岳遭難です」と伝えて、遭難場所と要救助者の状況をできるだけ詳細に伝えた所、ヘリを飛ばすとの連絡がありました。今回、スマホアプリから遭難地点の緯度・経度を伝えました。緯度・経度がわかる場合は伝えるのが山岳救助隊の到着が早まります。何度か消防と電話のやり取りしてると、ヘリより先に二人の山岳救助隊の方が上から歩いて降りてこられたので、状況を改めて説明した上で、要救助者を山岳救助隊へ無事に引き渡しできたので下山しました。

翌日、要救助者の方から御礼のお電話を頂いたので、その後の状況をお伺いしました。救助ヘリは飛んだものの、ヘリでのピックアップが地形的に難しかったようで断念し、山岳救助隊の方々が交代で担いで降ろしてもらったそうで、かなり時間を要して大変だったそうです。M戸は、近畿地区の消防や警察と滋賀山岳連盟が合同で毎年開催している山岳救助訓練に何度も参加したり、滋賀山岳連盟の山岳技術研修会に参加する等で、要救助者を担いで降ろす訓練もしたことありますがかなり大変でした。

病院で治療を受けた際に足の骨折含め怪我されていたとのことで、やはり動ける状況ではなかったのですが大事には至らなくてホント良かったです。

我々クライマーや登山者が行えるファーストエイドには限界があります。遭難現場で周りにいる者が可能な限りの救助はしなければなりませんが、いかにして早く山岳救助隊へつなぐことが大事です。要救助者の方が意識ある場合は気が動転している事が多いとは思いますので、ファーストエイドする側が冷静な行動や判断を行っていく必要があります。

もし、山岳のファーストエイドについて真剣に学びたいということであれば、山岳医療救助機構のアウトドアファーストエイド講習会がオススメです。費用と時間はかかりますが、山岳遭難現場にとても役立つ有意義な講習会です。以前M戸は、夏3日コースを受講しました。

https://sangakui.jp/

今回要救助者の方は、日頃から庭のように前尾根を登っておられた(様な事を言っておられました)ためか、防寒着やツェルト、雨具、非常食等は装備されておられなかったようでした。また要救助者の方のスマホでは電話は圏外で繋がらなかったです。遭難した時間が早く、たまたま私達が遭難現場に遭遇し、即座の行動で山岳救助隊を呼べて良かったのですが、あの後、天候悪化し山頂付近は雨が降ったようなので、もし周りに誰もいなくてビバーグしなければならなくなった場合は厳しいことになっていたかもしれません。

これは人ごとではなく、自分事として捉えて同様の事故とならないようにどうしたらよいか改めて考える良い機会になったと思いました。事故は複数の要因・リスクが重なった時に発生します。クライミングは、登山よりより危険なことをしているので、よりリスクを感じる感性を高め、少しでもリスクを感じたらリスクを減らしながらクライミングを楽しめたらよいと思いました。

<写真>

今回、雲一つ無い晴天
気温は前回より暖かい

P7取付きで、はいポーズ
登攀開始

P6をフォローで登るS根さん
終始笑顔です(^_^)

P5の核心部
M戸はここで装備落として
セットしたカムの1つにロープかけ忘れる
ミスをしてしまう〜
何度も登っているはずなのに(^_^;

S根さん初めての
P4前半の滑り台を
怖がらずに快適に登っていく
センスあります(^_^)/

P4後半で、現場初リードするS根さん
中間支点取りに悩みながら
慎重に登っていく

現場で初フォロービレイするS根さん
引き上げるロープ重たいですよね?

P3前半の難しい方の
クラックルートを
難なく登っていくS根さん

P3中間点で
にっこりビレイ中のS根さん

P3後半のトラバース
怖いですよね〜(>_<)

いざ!
P2ヤグラへ

S根さんとピンクに咲いてる花

P2ヤグラを登攀し
懸垂下降で降りてくるS根さん
ここで無事終了となる予定でしたが。。。

要救助者の方を山岳救助隊へ
引き渡し下山

ヘリも救助へ向かいましたが
残念ながらピックアップできず

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です