20210627 セルフレスキュー基礎講習(第2回)

日時:2021年6月27日(日)9:00〜17:00、曇り
参加者:K保、I口、S伯、W、M戸(報告者)
目的:会メンバーのセルフレスキュー技術を向上させ、安全で高度なクライミングを実践するため。
会場:比良げんき村人工登はん壁(滋賀県大津市)
講師:奥村 晃史 氏(日本ガイド協会公認フリークライミングインストラクター、日体協公認SCコーチ)

先日6月7日に開催した講習と大筋は同じ内容です。実践的な講習で1回の人数枠を絞っているので人数を振り分けての開催で今回は前回とは別メンバーが参加。但し講師判断で前回より基本技術にウエイトをおいた内容となっています。(M戸は講習参加者兼スタッフとして参加)

前回のブログ

http://yokaichi-mc.sub.jp/ymc/wordpress/?p=4650

<講習の模様>
前回より加味された内容を中心にポイントを記します。詳細は参加された方に確認下さい(笑)

Ⅰ.基本技術(パーツ)

1.ノットとヒッチ

①ノット
「フィギュアエイトノット・フォロースルー」の結び方と特徴や利点と弱点について説明頂いた。ハーネスにロープを結束する際に良く用いられている。利点は、通し忘れの失敗があってもトラブル発生時に生き残る可能性がある結びで日本ではハーネスへのロープ結束に9割以上使われている。ゆえに(日本では)クロスチェックもしやすい。弱点はいくつかあり理解した上での対処が必要、例えば末端は「ダブルオーバーハンド」で緩み止めするなど。

フィギュアエイトノット・フォロースルーの説明

「フィギュアエイトノット・オンアバイト」の結び方と特徴や利点、弱点について説明頂いた。ちょん掛け等様々なところで使用される。

フィギュアエイトノット・オンアバイトの説明

「バニーイヤーズノット」(ラビット・ノットやタブルループ・エイトノットとも呼ばれる)の結び方と特徴や利点、弱点について説明頂いた。レスキュー現場で必携。

バニーイヤーズノットの説明

「バタフライノット」の結び方や特徴や利点、弱点について説明頂いた。登山やクライミングの際の中間支点フィックス等でよく使われ必携。

バタフライノットの説明

「ボーラインノット」についての説明頂いた。結びが簡単で、沢登り等の濡れる環境や冬山等の凍る環境下でもほどきやすく通常の墜落では絶対にほどけ無いが、リング負荷に弱いという致命的な弱点があり、日本のクライミングでは近年では使われることがかなり少なくなった。但し、レスキューの現場では、相手を結んだり二人以上の荷重で何ピッチも降ろさないといけないことがあり「エイトノット」等ではロープがほどけず切らないといけなくなる事があり、その様な時でも対応できる「ボーラインノット」は必携の結び。

腰にボーラインノットを結ぶ練習

クライミングの様々な国や地域でリング負荷に強くする処理が編み出されおり、代表的な処理に「ヨセミテフィニッシュ」や「インラインボーライン」「バーミンガムボーライン」等がある。「インラインボーライン」は、ボート搬出や中間支点等レスキューの現場で使われる。「ボーラインノット」使うに当たってはリング負荷に強い処理を必ず行う。

ヨセミテフィニッシュの利点説明

「オーバーハンドノット」の結びや利点・弱点について説明頂いた。

オーバーハンドノットの説明

次に懸垂下降のロープ結束についての説明頂いた。
代表的な結束として「フラットオーバーハンドベント」「ダブルフィッシャーマンズベント」「フレミッシュベント」の三つがある。

「フラットオーバーハンドベント」は、引っかかりにくくてほどきやすくスポートクライミングの懸垂では、最近主流になっているが、結束は同径ロープの場合のみで耐荷重は一人荷重までなので、異径ロープの結束やレスキューで要救助者を降ろす時は使わない。

フラットオーバーハンドベント

フラットオーバーハンドベントが
引っかかりにくいことを説明

「ダブルフィッシャーマンズベント」は、定評のある結びで異径ロープOKで二人荷重OKだが、ほどきにくくて引っかかりやすい。「フレミッシュベント」は、異径ロープOKで二人荷重OK、且つほどきやすいが引っかかりやすい。それぞれ利点や弱点があるので状況によって使い分ける。

フレミッシュベントの説明

②ヒッチ
「クローブドヒッチ」「ムンターヒッチ」の結び方と利点、欠点について、及びHNS型カラビナとの関係等について説明頂いた。「クローブドヒッチ」はいわずもがな必携の結び。「ムンターヒッチ」は、仮固定用結びの「ミュールノット」とストッパー結びの「オーバーハンドノット」と会わせて覚える。「ミュールノット」と「オーバーハンドノット」の組合せで、確保器の仮固定・本固定でも素早く簡単に使えるので、レスキューの場面だけでなくスポートクライミングでも活用でき必携。

ムンターヒッチにカラビナミュールを結ぶ説明
本来は結び目は全てつけるが説明のため
ミュールノットとオーバーハンドノットを
離して結んでいる

③フリクションヒッチ
「オートブロック(マッシャー)」「クルムハイスト」の結び方や利点、弱点を教えて頂いた。フリクションの効きはコードの形状、材質や巻き方、ロープとの相性がある。技術の進歩で年々細くなり、それに伴いロープとの相性が悪くなっているのでフリクションヒッチ専用コードを使う人が増えている。他にフリクションヒッチの結び方はあるが、この2つを覚えて状況によって使い分ければレスキューの場面でほぼ事足りる。

フリクションヒッチの使い方説明後
参加者で練習

2.アンカー構築について

①スリングやカラビナの特性等
スリング種類の各強度や耐熱温度、コスト等の素材特性、各カラビナタイプの特徴、利点や弱点について詳細に説明頂いた。
〜スリング種類と特性比較〜
クライミングで使用されるスリング種類は、主にナイロン(ポリアミド繊維の商品名)、ダイニーマ(超高分子ポリエチレンの商品名)、ケブラー(アラミド繊維の商品名)の3種類。特性比較の概要は以下の通り。
・強度:ナイロン<ダイニーマ<<ケブラー(強度高いと細く軽く作れる)
・耐熱温度:ダイニーマ<ナイロン<<ケブラー(ダイニーマは耐熱温度が130℃程度と低く、且つ結び目を作った場合の強度低下が大きい)
・コスト:ナイロン<<ダイニーマ<ケブラー(ダイニーマとケブラーは高価)

スリングやカラビナの素材特性を説明中

アンカー構築のミニマム素材は、スポートのシングルピッチでグージョンボルト等強固な支点でのトップロープ終了点で使えるディレクション用クイックドローとクイックドローの組合せ。
スリング素材だと、スリングと支点用の安全環付変形D型カラビナとマスターポイント用にHMS型安全環付カラビナや安全環付オーバル型カラビナを使う。マルチピッチは、様々な工夫ができるスリング素材がメインとなる。

アンカー構築の素材
右側にディレクション用クイックドローと
クイックドローの組合せ

②フィックスドアンカーを使ったアンカー構築
③ナチュラルプロテクションを使ったアンカー構築

アンカー構築のための目指すべき指針5項目について説明頂いた。
・支点は強固(ソリッド)なものを使う。・
・多重性(リダンダント)を確保する。
・荷重均等性(イコライゼーション)が確保されているか。
・1箇所支点が崩壊してもズレ防止・固定(ノーエクステンション)ができているか。
・効率的でオーバークオリティになっていない(タイムリー)か。

固定分散と流動分散の構築方法は様々あるが、固定分散や流動分散それぞれ2個の方法を覚えておく。どちらかをメインもう一つはサブとして使う。基本は固定分散でノーエクステンションは固定分散しかない。リムーバブルプロテクション等のプアなプロテクションには固定分散しか受け付けない。方法はマスターポイントの結びでエイトノットかクローブドヒッチを使うことが多い。流動分散はトラバース等マスターポイントを動かす必要性があるのなら使い、方法はクワッドかスライドXを使う事が多い。スライドXは早くて簡単という利点はあるが欠点多いのでメインで使うのであればバックアップ等工夫が必須。

トーナメント方式の固定分散について
説明中

3.ビレイデバイスの使用方法

①アパーチャータイプの動作原理、特徴や利点欠点
②オートアシストタイプ(GriGri)の動作原理、特徴や利点、欠点
それぞれのビレイデバイスタイプのビレイ動作原理について図解等を用いて理論的にわかりやすく説明頂いた。尚、オートアシストブレーキタイプ(セミオートも含め)は、トラッドルート等のプアプロテクションのルートでは推奨しないと製品仕様書に記載があるので使用しないよう注意のこと。

ビレイの動作原理について
図解でわかりやすく説明中

GriGriの機構について説明

アパーチャータイプのガイドモードの使い方でロープを緩める方法として「コキコキ」と「リリースホール」についての説明

コキコキ(これ正式名称??)の説明

リリースホールについての説明
かなり力が必要で、女性は
難しく感じる方が多いとのこと
最近操作が軽いデバイスが出ている

4.仮固定

カラビナミュールについて

カラビナミュールについての説明

5.懸垂下降

バックアップ懸垂について
フリクションヒッチのところで練習したので口頭説明のみ

6.登下降

 フリクションヒッチでの登下降

フリクションヒッチでの登下降
について説明

フリクションヒッチの登下降の練習 

ガイドモード付きアパーチャータイプのビレイデバイスでの登下降
下降モードとガイドモードへの切り替え

ビレイデバイスでの登下降
について説明

バツ重ってなんですか?
荷重を抜くでバツ重
なるほど〜♪

講師による説明中

オートアシストブレーキのビレイデバイスでの登下降
口頭での説明のみ

Ⅱ.シングルピッチのセフルレスキュー

1.ビレイヤー脱出

①アンカー固定脱出/ビレイヤー交代
M戸が要求助者となって講師によるデモンストレーション後に参加者による練習

アンカー固定脱出を安全な方法で練習中

2.トップロープのセルフレスキュー(キャッチからカウンターラペル)
前回はデモンストレーションと練習を行ったが今回は説明のみ。

Ⅲ.懸垂下降のセルフレスキュー

①下降からの登り返し(下降モードからガイドモードへの入替え)
講師のデモンストレーションと参加者による練習

Ⅳ.マルチピッチ基礎技術
講師による考え方の説明実施

<所感>

M戸は2回目で復習できたが、他参加者は初めて知る基礎技術が多く、且つレスキューはそれら技術の組合せを上手く使いこなす事になるので、参加者によると頭の中がパンクしそうな状況とのことでした(笑)
但し、昨年KO-WALLリード店で開催したビレイヤー研修会で説明があった内容もあり、復習で理解をより深めた部分もあったようで良かったです。
基礎技術はマルチピッチクライミングで使う技術も多いので、日頃から機会があれば練習してスキルを高め、より安全で楽しくクライミングができるようにしていきましょう。
尚、会メンバーからリクエストあれば、秋辺りに追加開催を検討したいと思います。

One comment to “20210627 セルフレスキュー基礎講習(第2回)”
  1. Pingback: 20220605,11 シングルピッチ セルフレスキュー基礎講習 – 八日市山の会ブログ

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