20221120 近畿地区山岳連盟登山技術合同研修会

日時:2022年11月20日(日) 9:30〜16:30
天候:曇時々晴れ
場所:神戸登山研修所(兵庫県神戸市)
参加者:M戸(報告者)、滋賀県山岳連盟に所属する他山岳会からの参加者4名

<概要>
毎年恒例のJMSCA近畿地区山岳連盟登山合同研修会が、神戸登山研修所で開催された。参加対象は、兵庫、大阪、京都、滋賀、奈良、和歌山のそれぞれ岳連代表者から、20名を超える参加があった。今回は以下の課題について研修を行ったので、以下報告する。
1.クライミング時のグランドフォール事故の検証
2.岩場での残置支点整備報告

神戸登山研修所の玄関

<研修内容>

1.クライミング時のグランドフォール事故の検証
最近、クライミング(フリー・アルパイン)において、グランドフォール事故が多くみられるようになったとのことで、今回の研修では、多くの事故事例の中で、主に(1)椿岩、(2)烏帽子岩(3)不動岩の3つのグランドフォール事故事例についての机上検証と実地検証を行った。

(1)椿岩
場所:三重県、ルート:マタニティ、グレード:5.9、高さ:6m、登攀者:初級者、確保者:中級者、使用ロープ:シングルロープ、事故状況:登攀者が3ピン目となる終了点まで登り、ロープをセットしようとして落下し、取り付き点にグランドフォールして右足首を骨折した。いわゆるたぐり落ちであった。

(2)烏帽子岩
場所:兵庫県、ルート:タイムトンネル、グレード:5.10a:高さ:11m、登攀者:上級者、確保者:上級者、使用ロープ:シングルロープ、事故状況;登攀者が中間バンドより上部のクラックを約1m登った地点でスリップ。中間バンドにグランドフォールし、右足首を捻挫した。

(3)不動岩
場所:兵庫県、ルート:東壁 砂かぶり(マルチピッチルート)、グレード:Ⅳ級+、高さ:28m、使用ロープ:ダブルロープ、事故状況:3人パーティで、トップが終了点から確保し、セカンドの二人が登攀開始。約3m登ったバンドより、セカンドの一人がスリップ転落した。トップが確保していたにも関わらず、取付点まで落下、グランドフォールし負傷した。

その他、兵庫県の蓬莱峡にある駒形岩のルート:斜陽(5.9)では、中央バンドにグランドフォールする事故多いとのこと。

その後は、外の人工登攀壁の一部を使って、参加者全員でロープの伸びについて実地検証を行った。

-ロープの伸び実地検証-

神戸登山研修所の人工登攀壁
左がアルパインクライミングを想定した壁
右がスポートクライミング用の壁

ロープの伸びを検証中の模様

ロープ伸び検証動画20221120

上記動画は、Φ8mmの新品ダブルロープを使って、トップが20m登攀し、ガイドモードビレイしている時にフォロアーが4m登って落下した事を想定して検証。グランドフォールしている。(動画以外にも、様々な条件で検証を実施した。)

-結論-
様々な検証を通して得た結論は
フリークライミング(スポートクライミング)において、シングルロープを使ったトップロープは、3〜4mまで(2〜3クリップ分ぐらい)はロープの伸び分を繰り取らないと落下時にグランドフォールする可能性がある。(リードでも、4mおおよそ3クリップぐらいまでは弛み少なく最初のクリップポイントに近づいた場所でスタテックビレイをする。)
アルパインクライミングでダブロープを使用する際は、トップがガイドモードでビレイしている時は、セカンドやサードのフォロアーが4m以上登るまでは、ロープの伸びをクリ取らないと、落下時はグランドフォールする可能性がある事が、実地検証で改めてわかった。

 

2.岩場での残置支点整備報告
関西岩場環境整備ネット:KINet から、主に大阪、兵庫地域(烏帽子岩や不動岩等)の岩場整備状況について報告があった。組織の枠を越え、地元の方々の理解を得ながら定期的に整備されている。以下の添付資料に整備ガイドラインの記載あり。

221120_近郊岩場の整備状況

その時に出た課題は、一部岩場で、一部のマナー違反利用者により地権者や地域関係者の方からのクレームがあり、それが繰り返されると場合によっては岩場閉鎖に追い込まれている事案もあるとのこと。

<感想>
実地検証の結論は、クライミングジム KO-WALL リード店で行われる基本的なリスクを想定した安全指導(全てのリードジムで、適正に安全指導が行われているとは限らないことに注意)や、当会でリードクライミングを始める方へ指導する基本的な安全指導と合致した内容ですが、ある程度できるようになると安全に対して慣れ等からビレイ行動が横着になってしまうことがあります。横着だけでなく自分は大丈夫と慢心にならないように気を引き締めて、特に登り始めやショートルート、途中にバンドがあるケースなど、落下時にどのようなリスクが発生するか想定してビレイする必要があることを再認識できました。

岩場の整備課題については、大阪、兵庫地域にとどまらず、クライミング界の全国的な課題と捉えました。滋賀県近隣の岩場も例外ではなく課題ある事案が発生しています。クライマーは、単にクライミングを楽しむだけでなく、マナーや節度(いわゆるモラル・倫理感)を持った行動が問われていると、改めて認識できました。

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