日時:2020年10月31日 6:00〜16:00
場所:明星山
ルート:フリースピリッツ
参加者:K合会長、H藤(write)
行動概略:
6:00展望台駐車場発
6:15フリースピリッツ取付き
7:30登攀開始
14:00登攀終了
15:30駐車場着
感想
「みょーじさんに行かへんか?」 K合会長からそう誘われた段階では、明星山の漢字すら知らなかった。ただひとつわかったことはK合会長が直々に誘ってくるということは過酷な山なのだろうということだった。
調べてみると、13ピッチぐらいのロングルートで案の定楽なルートではないことがわかった。しかし、アプローチが15分という軟弱クライマーH藤には嬉しい数字と、何よりその異様な山容に惹き付けられ、徐々にモチベーションが高まっていった。
そして当日。
金曜日は現地では雨が降ったようでアスファルトが濡れていた。明星山は石灰岩の岩場のため、濡れているときの滑りやすさはバナナの皮といい勝負である。駐車場で闇の中うっすらと浮かびあがるおにぎりみたい新潟のマッターホルンを前に明日の岩が乾いていることを祈る。
当日は五時半に起床し六時に出発する。前日にK合会長に勧められるがままに飲んだ N本酒がやや体内に燻っている気がしたがむしろH藤の標準状態か、と開きなおる。
アプローチは売店横の踏み跡を下り、沢沿いに出る。沢を少し下降した大岩にフィックスロープがあり、対岸へと渡渉する。渡渉からフリースピリッツの取り付きまでは一分もかからず到着する。
取付きPTは我々を含め3PTで我々は最後尾からのスタートとなった。1PはH藤リードで以降はつるべでの登攀である。1、2ピッチは草付きバンドをトラバース気味に左上やはり前日の雨の影響がやや残り、泥が付着する。
3ピッチ目のスラブ、フレークの直上では靴裏の泥が潤滑剤となり足が信用できない。前のピッチから仕込んでくるとはなかなかの策士である。
4ピッチ目はクラックの直上からスラブの右上だが、このスラブが曲者である。ホールドもいまいちでスメアリングを要求される。H藤はフォローだったがトラバースのためなかなかの緊張感があった。
5ピッチ目は核心の梅干し岩直下までのトラバース。ホールドの位置の割にスタンスの位置が高い。しがみつくような態勢でトラバースする。
6ピッチ目は核心ピッチのためH藤がおねだりし、行かせてもらう。ちなみにウメボシ岩は全然ウメボシに見えない。恐らく特徴付けるために無理矢理ネーミングしたのだろう。全然ウメボシに見えない。ウメボシ岩を左から乗っ越して右へトラバースするトラバースはスタンスが下にあるので少しクライムダウンが必要である。高度感がありおもしろいピッチだと思う。
7ピッチ目はK合会長がトポ上の2ピッチを繋げて登攀する。ようやく素直に直上するルートになり、存分にフォローの恩恵を受ける。後半は下が切れた場所もあり、抜群の高度感を味わえる。
8ピッチ目はクラックの直上である。やや渋めだが、クラック故にプロテクションは十分に取れる。バンドのロープの長さ限界のところでピッチを切り、次のピッチの取り付きまで歩く。
9ピッチはなんとなく順番が変わりH藤がリードする。右上のランペ。…ランペ。K合会長がトポを見ながら「右上のランペやな」と仰ったときにH藤「あー…ランペッスね」と返しましたが、ランペの意味が解っていなかったことをこの場をお借りして謝罪致します。どうかこのブログを読んでおられないことを祈ります。
「ランペ」‥岩稜の中で傾斜の緩い場所
下山後調べました。スラブとは違うのか?
10ピッチ目 そろそろ終わりが見えてくる。残りのリードがあと1ピッチとなった H藤は「あと20ピッチぐらい登りたいですね!」と軽口を叩く。
11ピッチ目 H藤に天罰が下る。久々に現れたトラバースはこの日1番の高度感を持つ恐怖のトラバースであった。この日登ってきた400mが全て切れ落ちて眼下に広がっている。そしてホールドは石灰岩特有の鋭いピンチグリップである。ハーケンがところどころに打ってあるのが唯一の救いである。前PTの立っている場所をみて自分の立っている場所がどんなところか思い知らされる。
12ピッチ目は実質ラストのピッチである。5.8のグレーディングだがここまでの疲労を考えると侮れない。スタンスは細かく、岩は脆い。各所にリングボルト、ハーケンがあるため快適に登れるが無ければ泣きべそものである。おまけの13ピッチ目を終えて下降路へと向かう。
僅かな踏み跡を辿りテープの着いた下降路へ。K合会長のルーファイは流石である。H藤がGPSで確認すると、ログ上にしっかりと載っていた。
ずるずるな下降路を下って駐車場に戻る途中に明星山が現れる。今日一日の登攀路を振り返って二人しばし感慨にふける。
また来たいなぁ。今度は大勢で。