20201018 錫杖岳 1ルンゼ

日時:2020年10月18日(日)、日帰り
山行者:O野、M戸CL(報告者)
目的:錫杖岳1ルンゼ登攀

行動記録
中尾高原口駐車場 5:30発 → 笠ヶ岳クリヤ谷登山道入口 → 錫杖沢出合 6:30着 → 錫杖沢渡渉 → 左方カンテ取付 → 1ルンゼ取付 8:15着

<1ルンゼ> 8:45登攀開始 〜 15:15登攀終了 (6時間30分)
1P(コーナー左のフェース【Ⅳ】30m) → 2P(ハング〜スラブ【Ⅴ+】25m) → 3P(やさしい凹角【Ⅳ】45m) →4P(ルンゼ〜スラブ【Ⅲ】20m) → 5P(スラブ状フェイス【Ⅳ】30m) → 6P(左にカンテを越え、凹角〜クラック【Ⅳ】 25m) → 7P(開けたスラブ【Ⅳ】45m) → 8P(チムニー〜草付き【Ⅳ】20m)  ※日本の岩場(下)では登攀時間は4〜5時間

<下山>
同じルートを6P懸垂下降し1ルンゼ取付 17:40着 → 左方カンテ取付 → 錫杖沢渡渉 → 錫杖沢出合 → 笠ヶ岳クリヤ谷登山道入口 20:15着 → 中尾高原口駐車場 20:25着 下山

<登攀概況>
前回登攀した左方カンテとクライミンググレード【Ⅴ+】は同じだが実際は難しいと噂のルートで且つM戸が全てリードでのチャレンジ。
天候は、前日雨が降ったものの朝から晴天でクライミング日和。日が当たる箇所は乾いているが岩からの水の浸みだし、岩濡れが気になるところ。

錫杖沢出合からの紅葉と朝日に映える
錫杖岳前衛フェース

1ルンゼ取付:左方カンテ取付までは前回登ったので把握できているがが、その先はトポを見ながらでも形状がわかりにくく行き過ぎたりして30分程迷ってようやく到着。

1ルンゼ取付から登攀ルートを見上げる

1P目:事前情報の通り残置ハーケン等は抜かれているようでほとんど無く、ルートが読みにくいのでフェース左を慎重にスタート。中間支点のカムを程よい間隔でセットしながら前進。小ハング下がちょっとしたテラスとなっていて終了点用に大きめのカム含め3点セットしピッチを切る。

いざ1ルンゼへチャレンジ!!
O野さん(左)とM戸(右)

1P目を切ったところから奥飛騨温泉郷方面を望む
いい天気だ!

1P目をO野さんが登攀中

2P目:小ハングは最初の一手二手のムーブがいやらしく、何度か探って離陸できた。その後はスムーズに登攀。トポには25mとあるが15m程でハンガーボルトが打ってある終了点に到着。1Pと2Pは、距離的につなげて登攀可能。

2ピッチ目をO野さん登攀中

3P目:やさしい凹角の通り、傾斜が緩くほとんど中間支点を取らずとも登攀可能。トポでは最初に少し左のフェースを登るようになっているが浮き石が多くルンゼに沿って登攀。大きな凹角は歩き。水の浸みだしが多かったのでスリップに注意した。終了点は、V字状岩壁下の幾つかのハーケンとリングボルトで構成されていた箇所でピッチを切る。トポ通り45m程。

3Pのやさしい凹角を見上げる

3P目を登攀中のO野さん
登攀というより歩きが多い

4P目:V字状岩壁下のカンテを越え、狭く深いルンゼをまたぎながら、左側のフェースから登攀。上がった所のスラブすぐにリングボルトの終了点でピッチを切る。トポ通り20m程。

4P目終了点フォロービレイ中からの景色

5P目を見上げる
左側は岩が崩落して、右側は全体岩濡れ

5P目:ここはトポとは岩形状が大きく異なった厳しかった箇所。トポではⅣだが5.9ぐらいか。トポでは水平に左へ進んで大岩左を直上とあるが、大岩の左側が大きく崩落しており、まだ岩が不安定の状況。大岩左側からV字上岩壁までは大きなルンゼ状となっており、且つ岩からの水の浸みだしが広範囲に渡っていた。まずはトポ通りに左へ水平移動し直上したが岩が不安点なのを改めて確認して一旦戻り、右側のフェースから直上し、トラバースするルートへ変更。トラバース直前には、ハーケンとハンガーボルトが打ってあり、岩形状が変わった後の核心部と認識。トラバースは、手のホールド箇所は全て濡れていてホールド感が全く無し。足場も斜め形状で濡れており、ここをスリップすると振られて岩側面へ激突は真逃れない。ルートファインディグしながら、慎重に恐怖感との戦いで弱点をつきながらトラバースに一歩踏み出す。バランスを取りながら二歩程進むと岩濡れが少なくなり安定。丁度良い位置の大きいクラックにハーケンと伸ばした残置スリングがあり、ここでやっと中間支点。その後トラバースすると、広いテラスにハーケンの終了点がありピッチを切る。トポは30mだが25m程の長さ。ここのテラスで小休止。

5P目ビレイ中のO野さん
では行ってきますね!!

トポ通りに左側に取り付いたが
崩落激しく断念し戻る

岩濡れ箇所をトラバースか。。
と思いながら右側登攀開始

このピッチ核心の岩濡れトラバース
へ進むO野さん

あ〜怖かった(笑)
5P目終了点のテラスで小休止

テラスから望む
初冠雪の穂高連峰

6P目:ここもトポのグレードはⅣだが、5.9の印象。スタートすると直ぐ上のカンテにハンガーボルトのより安定した終了点あり。懸垂下降はこの箇所を利用することを確認。左に巻いて凹角に入る前に目印の様にハンガーボルト有り。凹角にもハンガーボルトが2箇所程打ってあった。岩が軽い音がしている箇所が多く、カムもセットしにいくい状況でもあったので、崩落などで岩形状が変わり整備されたものと想定される。途中には狭くて松の木に向かって乗っ越す所で、いいホールド無くて手こずった。登り直しを何度かし、安心感を得るのにカムを連打しながらやっと超えたが時間がかかった。乗っ越すと、後は安定したクラックとフェースを登るルート。終了点はハンガーボルト。トポ通り25m程。

5P目終了点上ハンガーボルトから
6P目を見上げる
写真左の凹角が厳しかった

6P目終了点からの紅葉

6P目を登攀中のO野さん

7P目:今回最大の核心部。トポではスラブを右斜め上に上がるようになっていたので登ると、急傾斜の少し水が染み出したフェースとなりカムを入れられるようなクラックもなくホントにここⅣかなという箇所で前進できなかったので、一旦10m程クライムダウンし左斜め上の弱点をついて前進した。左に行きすぎて、人工登攀用のハーケンやリングボルトが連打されている箇所があったので、少し右に戻り登り直すと、程よい中間支店場所にハーケンと、その上にハンガーボルトが打ってあったので、ここでピッチを切る。ここも時間がかなりかかった。トポ通り45m程だが、トポと岩形状が相当異なると認識。

7P目を見上げる
ルートファインディングが
難しかった

7P目終了点からの焼岳

7P目を登攀中のO野さん

8P目:ここは直ぐ左に残置ハーケンがあったので、ここが登るチムニーと認識し前進した。チムニー直ぐ上に岩濡れしまくった連続したクラックがあり、ここがとても苦しかった。少なくともⅣではない。安心感にカムを連打したが、落ちそうになった箇所あり。何とか堪えて、その箇所を越えると草付きルンゼを登るルートとなった。草むらクライミング。残置の中間支点を過ぎた後、小さなバンドに大きな木に残置スリング及び懸垂下降のための比較的新しいカラビナがあったので、ここを終了点としてピッチを切った。

8P目ビレイのO野さん
最後のピッチよろしくお願いしますね!!

ここにスリングが沢山巻いているのと
真新しいビナがあるのでここが最終ピッチ
の終了点??あとで違うとわかったけど。。


最終ピッチ終了点から見た穂高連峰

8P目を登攀中のO野さん

下山:同じルートを6P懸垂下降で下山。ハンガーボルトもあるが、ハーケンやリングボルトの箇所もあるので、そこは補強して使用した。

8P目を懸垂下降中のO野さん
トポのチムニーに見えたんですが。。。

6P目を懸垂下降中のO野さん
やった〜のピース(笑)

3P目終了点から懸垂下降
準備中のM戸

1ルンゼ取付から
懸垂下降のO野さん
もう暗くなってました

所感
今回アルパインのベテランであるO野さんと初めて2人でパーティーを組み、錫杖岳 1ルンゼを登攀しました。この日の1ルンゼは私達のパーティーだけ。ルートは事前情報通りわかりにくく、ルートファインディング能力を要求され、クライミンググレードもトポと違って高めのピッチ多く一部方向も違っていて、前日の雨の影響から岩濡れしている所もあり、登攀概況の通り5P目から中盤以降はずっと難敵でかなり手こずりました。ベテランO野さんにして「やさしい凹角のピッチ以外は絶対リードしたくない!!」と言わしめるほど。時間はかかったものの、何とか登攀でき6ピッチ懸垂下降で取り付きまで戻って時には、やり切った充実感に満ちていました。O野さんに感謝!!
でも同時に筋肉痛で身体中が痛かったです(笑)

晴天と錫杖岳の紅葉と初冠雪の穂高連峰を観ながらの登攀は、今年の無積雪期アルパインクライミングの仕上げとして素晴らしい経験となりました。

 

後日に1ルンゼ登攀のYouTubeを教えてもらって改めてルートを確認すると最終ピッチの終了点が違っていました。本来の終了点は、はっきりとしたハンガーボルトが打ってあるのと、動画の草付きバンド形状から考えると7P目から右斜め上に前進するべきところでした。私達と同様に間違えて登るパーティが多いみたいでそのルートに残置が多かったことからアルパインクライミングのあるあるなのですが、ルートファインディング能力をもっと磨いて再チャレンジしたいです。

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