20200813-15 夏山合宿 剱岳チンネ アルパイン

日時:2020年8月13日(木) 〜15日(土)
参加者:H藤SL(登攀隊L)、K林、T井、K保、M戸CL(報告者)
目的:剱岳山域の夏山合宿  登攀隊は剱岳チンネ アルパインクライミング
※縦走隊(I川SL、K島、N澤)は都合により中止

行動記録:
1日目(13日)
剱岳山頂天候:霧一時雨 夕方から曇り 気温:11〜12℃、風速:7〜12m/s
立山駅に車を駐車しケーブル電車&バスで立山室堂へ
立山室堂8:40発 → 雷鳥沢キャンプ場 → 剱御前小舍 → 剱沢キャンプ場 11:45着 BC
※山行計画は、剱沢から長次郎谷経由で熊ノ岩 BC予定だったが、剱沢警備派出所の山岳警備隊に確認したところ、長次郎谷の雪渓がいたるところで崩壊し通行不可とのことで、剱沢をBCとし本峰・北方稜線経由でチンネへ行く計画へ急遽変更。

2日目(14日)
剱岳山頂天候:晴れときどき霧、気温:12〜13℃、風速:6〜11m/s
剱沢BC 3:00発 → 剣山荘 → 一服剱 → 前剱 → 平蔵の頭 → 剱岳 6:15着 (休憩) 6:30発 →長次郎のコル 6:50着 → 長次郎ノ頭 7:15着 → 池ノ谷乗越 8:00着 → 池ノ谷ガリー  → 三ノ窓 9:00着(登攀具装着) 9:25発 → チンネ左稜線 取り付き 9:50着 10:00登攀開始

<チンネ左稜線(460m V級)>
登攀構成:先行はK林/M戸CLペア、後続はH藤SL/T井/K保の2パーティ
1P(凹角からバンド【Ⅳ】20m) → 2P(クラック〜フェース〜小ハング【Ⅳ】50m) → 3P(草付きバンド〜ルンゼ【Ⅱ】30m) →4P(フェース【Ⅳ】20m) → 5P(草付リッジ【Ⅰ】40m) → 6P(フェース【Ⅲ】40m) → 7P(フェース【Ⅲ】40m) → 8P(ピナクルの林立するリッジ【Ⅲ】50m) → 9P(カンテ左のクラックからハングを左上気味に超して右の凹角へ【Ⅴ】50m) → 10P(凹角〜リッジ【Ⅳ】30m) → 11P(リッジ〜フェース【Ⅲ】50m) → 12P(フェース〜水平リッジ【Ⅲ】50m) → チンネの頭 登攀終了 16:30
3P連続懸垂下降し、池ノ谷ガリーへ → 池ノ谷乗越 18:00着 → 長次郎ノ頭 → 18:45着 → 長次郎のコル 19:00着 → 剱岳 20:00着 → 平蔵の頭 20:40着 → 前剱 21:30着 → 一服剱 → 剣山荘 → 剱沢BC 0:00着

3日目(15日)
剱岳山頂天候:霧ときどき風雨のち曇り、気温:11〜16℃、風速:12〜15m/s
幕営地 8:30発 → 剱御前小舍 → 雷鳥沢キャンプ場 → 立山室堂 11:55着
バス&ケーブル電車で立山駅へ 下山

山行概況:
1日目は、朝から雨で風も強く、剱沢キャンプ場に到着した時には身体が震え、これ以上の行動により低体温症となるメンバーが発生してもおかしく無い状況。山岳警備隊に長次郎谷の状況を確認したところ雪渓の崩落が酷く通行不可とのこと。山行計画担当のH藤SLを中心に撤退か計画変更を検討した。結果、13日は夕方まで雨が降る予報でこれ以上の行動は難しいとの判断で剱沢をBCとし、天候は、予備日16日も含めて考えて14日が一番安定している天気予報から、14日に剱岳本峰〜北方稜線経由の日帰りでチンネへ向かうこととした。想定時間はコースタイムから3時出発、8時半チンネ登攀開始、18〜19時には剱沢BCに戻ってこられる計算で実行可能と判断しM戸も了承した。

2日目は、朝から天候安定する中、まず剱岳本峰へ向かった。途中K林の靴底が剥がれるトラブル発生しテーピングで補強しながらだったが、剱岳本峰までほぼコースタイム通り順調に到着。そこから先の北方稜線では、ルートファインディングしながら時間がかかったことと、M戸とK林のペースが落ちてきており、コースタイムより大幅に遅れる状況となった。池ノ谷ガリーでは、歩く度に落石が発生し且つ5人の人数が慎重な行動を強いられ余計に時間がかかることに。本峰から三ノ窓までコースタイムでは2時間のところ、2時間半もかかった。そこから準備や取り付きへの移動等で登攀開始は予定の8時半から10時へズレ込んだ。

チンネ登攀は、最初の2〜3ピッチは、ルート読みやピッチの切り方把握に時間がかかってしまったが、後は2パーティとも順調に登攀。先行パーティに追いついたが待ち発生が多くなっていた。ルートは高度感あるものの比較的ホールドにカバ多い。一方で浮き石や脆い岩が多々あり大きな岩も動く。手足のホールドとなる岩の強度や置き方を確認しながら慎重な登攀が求められる。支点に関しては、中間支点は残置ハーケンが各ピッチにいくつか残っているが、無い箇所もあり1セット程度のカムは必要。ナッツもあればケースバイケースで対応できる。終了点にはハンガーボルトが打ってある箇所や無い箇所もあるが比較的分かりやすい。T5核心部は、残置ハーケンやハンガーボルトがやたらと打ってあり、全て使うとヌンチャクが足らなくなるので注意が必要。T5核心部は、Ⅴ級で2番目のハング乗り越えに最もスキルが要求される。登攀前の練習では、藤内壁 一の壁の場合、Ⅴ〜Ⅵ級のルートでリードできるスキルが必要と考える。尚、K林/M戸のペアはぶっつけ本番でコール等の事前すりあわせができていなかったが、トランシーバーを使うことでカバーできた。但し、岩の回り込みが多いところではトランシーバーも通じないところがありそこでは困ったが、全体の流れから判断して進めることができた。スムーズな登攀には、ペアでの事前練習が欠かせないと感じた。

登攀終了後に3ピッチ懸垂下降した際は、K林の経験・スキルによるスムーズな準備や行動のお陰でスピーディな下降ができた。

下山の折り返しの北方稜線〜劔岳本峰では、M戸、K林のペースが上がらず、二人の一部共同装備をH藤SL、T井、K保に持ってもらうこととなった。北方稜線前半で日が落ち、ヘッドランプを点灯してのルートファインディングは行きよりも更に時間がかかってしまうこととなり、剱岳山頂到着時点で20時着となりコースタイムの20分遅れ。剱岳山頂から剱沢BCでは、疲労からM戸、K林のペースが更に落ち、夜のルートファインディングにも時間がかかったため、コースタイム2時間半のところ4時間かかった。
結果的に2日目の行動時間は21時間と長時間におよぶこととなった。但し、天候は安定し、気温が1日目より比較的高く風も弱めだったので、停滞・ビバーグしてしまうような必要以上の体力消耗は防げたことが幸いした。

3日目は、剱沢から室堂への下山のみであり、前日の到着が遅かったこともあり出発時間を計画の5時から8時へ遅らせ十分休息をとった上で無事下山した

所感:
今回のチンネ登攀は、トポ4〜5時間に対して6.5時間もかかったが、先行パーティー待ち等あり全体的に内容は良く特に核心部では皆が楽しく登れたと思う。事前に参加メンバー全員で登攀の事前練習がほとんどできておらず、練習できていれば5時間以内で登攀できるポテンシャルはあると考える。
今回、登攀よりアプローチに問題があった。チンネ行き帰りでM戸とK林の体力不足によりペースが遅く長時間行動になってしまい、他メンバーにはルートファインディングや荷物を持ってもらう等、リスク高い状況となってしまい迷惑をかけてしまったことが大きな反省点。H藤SL、T井、K保の体力、そしてK林のチンネでの経験やスキルに大きく助けて頂き、結果的にチームワーク・総合力で成功できた事で、メンバー皆には感謝しかない。
M戸自身、合宿のチープリーダーとしての反省点は、アルパインクライミングに見合った体力や経験等、総合力が不足したこと。それらを継続して向上させて行くことが今後のM戸の課題である。課題を克服していくことで、会全体として、再度のチンネ登攀含め様々な山域のアルパインクライミングにチャレンジできるものと考える。

1日目、ガスって眺望がほとんどない立山室堂

雨の中の雷鳥沢キャンプ場

剱沢キャンプ場は夕方から雨上がり晴れ間も

ガスって眺望無かった剱岳 本峰は日暮れにガスが抜けて見えるように

2日目、剱沢キャンプ場を3時に出発

御来光と左に剱岳本峰

一般登山者が多かった 剱岳 山頂 6:15

剱岳山頂からの八ツ峰

剱岳山頂からの源次郎尾根

剱岳山頂から剱沢を観るM戸

北方稜線へ

長次郎のコルへ

長次郎の頭あたり、崩落多い箇所に残置ロープ有

テント張れそうな広い場所で休憩

H藤SLと八ツ峰

池ノ谷乗越への急峻な下り

池ノ谷乗越から下ってくるK林とM戸

池の谷乗越で靴補修中のK林

池の谷ガリー 歩くたびに落石あり

池の谷ガリーから下りてくるM戸

三ノ窓からのチンネ全景

アイゼンとピッケルを装着し、左稜線取付へ雪渓を歩く

左稜線取り付きのH藤SLとK保

左稜線取り付きからの三ノ窓

1P目を登るK林 10時登攀開始

1P目、K林をビレイ中のM戸

2P終了点からT4/T5を望む

6P目を登るK林

9P目のT5核心部と10ピッチ目、左側にはクレオパトラニードル

8P目を登るK林

9P目、T5核心部をセカンドで登るM戸

 

9P目、T5核心部をリードで登るH藤SL

9P目終了点でビレイ中のH藤SL

10P目を登るT井

11P目で待機のK保

チンネ山頂のH藤SLとT井 16:30

チンネ山頂で登攀終了し懸垂下降中のK林

下山途中の剱岳山頂 20時

剱岳山頂からの富山市内の夜景

3日目、靴底が剥がれてテーピングで補修しているK林の登山靴

霧雨の中、剱御小舎で休憩中のメンバー

雷鳥坂からの室堂方面

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